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2005年07月09日

G8閉幕 次の貧困との闘いは国連サミット9/14へ

G8、アフリカ支援に政治的指導性示せず
日本の増額表明は低い目標達成への小さな一歩
貧困との闘いは国連サミットへ

世界中で史上最大の規模で沸き起こる「貧困を過去の歴史に」という声に押されてアフリカ支援を前面に打ち出したG8サミットは、いくらかの前進を見せたものの、その勇ましいスローガンからはほど遠い内容で閉幕しました。その中で日本は、これまで削減され続けていたODAの増額を発表、貧困削減に重要な意味を持つすべての政策課題について政治的指導性の欠如が如実であった今回のG8で、追加援助額を表明した唯一の国となり、もともと低く設定されていた今回のG8の目標になんとか貢献することになりました。アフリカ支援がG8の主要課題になったこと、そしていくらかの前進が見られたことは、キャンペーンを行う世界中の市民の成果といえます。同時に貧困を克服するための闘いは今後、国連の「ミレニアム+5」サミットに舞台を移し、そこで日本を含む先進国のさらなる取り組みが求められることになります。

「ほっとけない 世界のまずしさ」は今回の日本政府の発表をまずは歓迎しますが、その目的が貧困削減にあることを再確認し、日本が自らの責任を果たすために、緊急課題として援助の質の改善、0.7%目標達成、貧困国債務の全面帳消し、国際貿易体制の公正化への取り組みを大幅に強化することを強く要求します。

1.債務
6月のG8財務相会議で合意された「18カ国(うちアフリカ14カ国)の多国間債務完全帳消し」について、「ほっとけない 世界のまずしさ」を含む市民社会運動(GCAP)は、貧困克服に債務帳消しを必要とするすべての国々にその原則を拡大することを求めていましたが、対象国拡大への言及は結局なされませんでした。貧困の克服に向けて国内改革が進んでいる多くの貧困国は、その改革を支える財政支援を必要としており、G8はその期待を裏切ることになりました。


2.途上国支援
議長国・英国は「2010年までにG8全体で500億ドルの援助増額」を今回のサミットの目標にしていました。これはEUが発表していた2010年までの400億ドルの追加援助、米国の6億ドルの増額など、サミット前にすでに交わされていた約束に、今回の日本の増額を加えることで達成されることになりました。これにより、2010年までに500万人の子どもの命を救える可能性が出てきましたが、それでも5000万人の子どもは貧困で命を失い続けることになります。

しかも、GCAPや国連、そして英国政府自身によるアフリカ委員会が求めていたのは、1.2010年までに各ドナー国が「国民総所得(GNI)の0.7%を援助に拠出する」という35年前の約束を守ること、さらに、2.緊急の要請として年間500億ドルの追加支援(対2004年レベル)を2006年以降即時実行することでした。つまり、今回のG8の結論は、3.0.7%目標についてはサミットでの新しいコミットメントは皆無、4.2006年時点で必要とされていた500億ドルは2010年まで待つこととなり、2006年度には50億ドル ほどしか用意されないことを意味します。これらがすべて実現していれば、3億人が貧困から脱出できた可能性がありました。

「ほっとけない 世界のまずしさ」のスポークスマン、山田太雲(オックスファム・ジャパン)は、「貧困によって毎週インド洋津波と同じ数の人々が命を失っている。津波支援を5年たってから届けるのか」と訴えます。

日本の途上国支援増額
日本政府が「5年間で100億ドルの支援増額」を発表したのはこのような文脈でした。貧困削減に向けて先進国の真剣な取り組みを求める世論がかつてないほど盛り上がる中、先進国の取組強化のモメンタムを失わせなかったという意味で、一定の役割を果たしたと言えるでしょう。

しかし、GNI比0.7%目標の達成に向けた予定は表明されていませんし、中身についても詳しいことは不明のままです 。援助の目的は貧困の下に暮らす人々の尊厳の回復と生活改善であり、国際政治における日本の存在感向上ではありません。貧困削減の効果を伴わないかぎり今回の増額に意義があったとは言えませんし、途上国支援に対する国内世論の信頼をさらに落とすことになります。

「ほっとけない 世界のまずしさ」は日本政府に対し、世界の貧困削減に向けた努力に貢献するためにも、そして国民のODAに対する支持を得るためにも、今回増額した分も含めて、援助の質の改善にむけて、早急に以下に取り組むことを強く訴えます。

・すべての援助のアンタイド化
・円借款よりも無償援助の重点化
・アフリカなど最貧国の重点化
・基礎教育や基礎保健などの社会開発分野への配分の拡大
・世界基金への拠出やリカレントコスト支援などが必要に応じて行えるようなスキームの柔軟化
・被援助国政府が援助資金を効果的に活用するように監視・提言する現地市民社会のエンパワメント重視
・他のドナー国との援助調和化
・長期的には、現在多くの省庁が関わるODAの政策決定機関を、「援助庁」を新設し、援助政策の責任をそこに一元化すること

また、6月に合意された債務帳消しの補填にこの増額分が使われる可能性も排除されていないようですが、重要なのは日本の帳簿上途上国支援を増やしたかどうかではなく、途上国が必要とする開発資金が実際にいくら届くのかであり、債務帳消しの補填金は別の資金を活用すべきです。


3.貿易
WTOにおける交渉を貧困削減に資する方向に動かすためには、G8が途上国に肯定的なシグナルを送る必要がありました。今回の声明で注目に値するのは、「途上国の市場開放の規模とスピードに関する決定権は途上国政府自身にある」とする文言ですが、ジュネーブでは相変わらず欧米諸国の交渉担当者は反対の方向で途上国に圧力をかけ続けています。

また、欧米諸国の輸出補助の撤廃に向けては、相変わらず欧米がお互いを批判するのみで、途上国の貧農を傷つける補助金撤廃に向けた具体的な日程は示されませんでした。

以上

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「ほっとけない 世界のまずしさ」キャンペーンは、世界の貧困の克服を求めて日本国内のNGOが中心となって行っている大規模な共同キャンペーンです。政府に対して援助、債務、貿易政策を中心に貧困削減に資する政策の履行を求めると共に、世界的な連帯のシンボルである「ホワイトバンド」を通じて市民への意識啓発運動を行っています。現在31のNGO団体が賛同しており、その数は増え続けています。NGO以外にも、中田英寿選手、作家の村上龍さん、歌舞伎俳優の中村勘三郎さん、歌手のMisia(ミーシャ)さんなど、そうそうたる著名人のみなさんが、ホワイトバンドを着けることでキャンペーンへの賛同の意を示してくださっています。

貧困撲滅を求める世界的な市民運動、「Global Call to Action against Poverty (GCAP)」にも参加しています。英国内ではMakePovertyHistoryとして知られているこの運動には、すでに2億人近い市民が参加しています。

投稿者 sustena : 2005年07月09日 00:34

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